
予防薬を考えるときは、頭痛の日数と暮らしへの影響から
過去に使用してきた内服の予防薬にて、副作用としてたちくらみ、倦怠感、眠気などが問題となり、内服予防薬の継続が困難となってしまうことや、頑張って内服を継続したのにもかかわらず、頭痛予防に対して効果を感じることができない結果となってしまうことがあります。この場合には、片頭痛発作予防の方法を内服薬から注射へと変更を考えることになります。
予防薬は、痛みが出てから飲む薬とは役割が異なります。発作が起こる日を減らすことを目指して続ける薬です。この記事では、CGRP関連抗体薬と、β遮断薬・抗てんかん薬などの飲み薬について、働く場所と続け方の違い、受診前に整理しておきたい記録をまとめました。どの薬が適切なのかについて、頭痛の日数と頭痛による日々の暮らしへの影響をもとに医師とともに考えていくものとなります。
この記事の要点まとめ
- 抗体薬はCGRPに働く注射薬、β遮断薬・抗てんかん薬は毎日飲む予防薬です。
- 頭痛日数や服薬日数、生活への影響、体調の変化を記録して治療を見直します。
- 以前の薬や妊娠の希望、通院方法・費用を医師に伝え、治療方針を相談します。
目次
注射薬と飲み薬は、どこに働きかけ、どう続ける?

CGRP関連抗体薬は、片頭痛の痛みに関わる物質「CGRP」の働きに的を絞った注射薬です。β遮断薬や抗てんかん薬は、もともと別の病気に使われていた飲み薬で、片頭痛の予防にも用いられるようになりました。こちらは毎日飲み続けることが前提になります。
CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)は、発作のときに三叉神経(顔や頭の感覚を伝える神経)から放出されます。血管を広げたり、痛みの信号を強めたりすると考えられている物質です。抗体薬は、CGRPそのもの、またはCGRPを受け取る部分(受容体)に結びつき、その働きを抑えるように作られています。
国内ではエレヌマブ、ガルカネズマブ、フレマネズマブなどが使われています。臨床試験をまとめた解析では、偽薬(有効成分を含まない薬)と比べて、月あたりの片頭痛日数の明らかな減少が報告されています12。治療開始半年後の成績として、治療を行った患者さん全体の50%において、頭痛日数が半分となります。また全体の25%において頭痛日数が1/4となり、全体の9%において頭痛がほとんど生じなくなります。ただし、変化の出方には治療開始時点での片頭痛の重症度に左右されるため、個人差があります。
β遮断薬は高血圧や不整脈、抗てんかん薬はてんかんの治療に使われてきた薬です。神経の興奮しやすさを整えて発作を起こりにくくすると考えられていますが、片頭痛を防ぐ詳しい仕組みはまだ研究が続いています。
CGRPに働きかける注射と、内服薬の働き方
「何に働くか」と「どう続けるか」の2つの軸で並べると、違いが見えやすくなります。
| CGRP関連抗体薬 | β遮断薬・抗てんかん薬 | |
|---|---|---|
| 働きかける対象 | CGRPやその受容体 | 神経の興奮しやすさなど、より広いしくみ |
| 使い方 | 皮下注射(間隔は製剤ごとに決まっている) | 毎日の内服 |
| 量の決め方 | 製剤ごとにおおむね一定 | 少量から始め、体調を見ながら調整することが多い |
抗体薬は毎日の服薬が不要です。その代わり、注射を受けるための受診が必要になり、製剤によっては自己注射の手順を覚える必要もあります。飲み薬は自宅で続けられますが、量を調整する時期には受診の間隔が短くなりやすいという特徴があります。
現在報告されている各研究論文の評価方法としては、抗体薬と偽薬、または抗体薬どうしを比べたものです。抗体薬と飲み薬と直接比べた結果ではありません12。ただし、実臨床における治療効果としては、明らかに抗体薬の効果に軍配が上がります。
ポイント
注射薬と飲み薬の違いは、優劣ではなく「働く場所」と「続け方」にあります。暮らしの中で続けやすい形かどうかも、選ぶ材料になります。
効果と体調の変化は、何を記録して見直す?
予防薬が合っているかを判断する材料は、頭痛が起きた日数・痛み止めを飲んだ日数・生活への支障の3つです。薬を始める前から記録しておくと、治療中の変化と比べやすくなります。
臨床研究でも、月あたりの片頭痛日数の変化や、日数が半分以下になった人の割合が評価の物差しとして使われています12。予防薬は、使ったその日に変化を感じる薬ではありません。どの時期に効果を見直すかは薬の種類や治療の状況によって異なるため、始める時点で医師と目安を決めておきます。
体調の変化も同じ記録に残します。抗体薬の臨床試験では、注射した部分の痛み・赤み・腫れといった反応が報告されています3。どの薬で何が起きたかが分かれば、次の判断に生かせます。
反応が出たときは、起きた日と程度、日常生活に差し支えたかどうかを書いておいてください。発疹が広がる、息苦しいなど普段と違う症状がある場合は、次の受診を待たずに医療機関へ連絡してください。
月末の仕事や家庭の予定への支障も書き留める
発作の回数だけでは、「締め作業の日に早退した」「子どもの送迎を家族に頼んだ」といった負担が医師に伝わりにくくなります。頭痛日記に、次の項目を加えてみてください。
- 頭痛があった日と、痛みが続いた時間
- 痛み止めを飲んだ日と、薬の名前
- 早退・欠勤した日や、家事・育児の予定を変えた日
- 予防薬を使ったあとに気になった体調の変化
記録を続けると、「月末に集中する」「寝不足が続いた翌日に起きやすい」といった偏りが見えてきます。当院に限らず、発作の回数とあわせて生活への支障を伝えることは、薬を選ぶ際の判断材料になります。
以前の薬が続けにくかった場合、次に何を相談する?
前の予防薬が合わなかった場合は、薬の名前・量・使った期間と、何に困ってやめたのかを具体的に伝えるところから始めます。一つの薬が合わなかったとしても、予防治療そのものを諦める必要はありません。別の系統の薬や、使い方を変えることも検討できます。
受診前に次の点をメモにまとめておくと、診察で伝え漏れが起きにくくなります。
- 以前使った予防薬の名前、量、使っていた期間
- 困った症状(仕事中に集中しにくい、眠気が残るなど)と出始めた時期
- 中止した経緯(医師と相談したか、自己判断か)
- 持病と、ほかに飲んでいる薬やサプリメント
- 妊娠の希望と、おおよその時期
これまでの病状経過の情報は、今後投薬する薬剤を選択するためにとても役立ちます。またCGRP関連抗体薬を保険診療で使うには、従来の予防薬で十分な効果が得られなかった、または副作用で続けられなかったといった条件が定められています。そのため、以前の治療の記録が条件を確認する手がかりになります。適応や条件は薬ごとに異なるため、診察時に医師と確認してください。
妊娠を考えている場合は、自己判断で薬をやめたり変えたりせず、先に計画を伝えてください。抗体薬も飲み薬も、妊娠を考える時期や妊娠中の使用については薬ごとに慎重な判断が必要で、中止のタイミングも相談しながら決めていきます。抗体薬の安全性は臨床試験で評価されていますが3、妊娠中の使用に関する情報は限られているため、一人ひとりの状況に応じた判断が必要です。
ポイント
「合わなかった薬」の記録は、次の選択肢を絞り込むための手がかりになります。妊娠の希望は、治療を始める前にお伝えください。
名古屋市で通院を続けるために確認したいこと
予防治療は数か月~年単位で続けることが多いものです。始める前に「投与の間隔」「受診にかかる時間」「自己負担」の3点を確かめておくと、仕事や家計の見通しを立てやすくなります。
抗体薬は注射の間隔が製剤ごとに決まっています。医療機関で注射を受けるのか、自己注射を選べるのかによって、通院の回数は変わります。取り扱っている薬や投与方法は医療機関ごとに異なるため、受診前に問い合わせておくと安心です。
費用は、抗体薬のほうが飲み薬より薬剤費が高い傾向にあります。3割負担の場合、1回の注射で1万5千円程度の負担となることが一般的で、初回のみ使用する量が多くなる製剤もあります。
治療の期間と回数の目安としては、月1回の注射を続ける製剤が多く、3か月ごとにまとめて注射する方法を選べる製剤もあります。効果の見直しは始めてから3か月前後をひとつの区切りとすることが多く、その後も続けるかどうかは、頭痛の日数や体調をもとに医師と定期的に判断します。たとえば月1回の注射を6か月(6回)続けた場合、3割負担での薬剤費の自己負担は合計でおおよそ9万円程度が一般的な範囲です。このほかに、毎回の診察料や、必要に応じてMRIなどの検査費用が別にかかります。
これらは一般的な相場であり、実際の費用は医療機関や負担割合、製剤の種類、治療期間によって異なります。なお、医療費が高額になった場合は、加入している健康保険組合などによっては「付加給付制度」の対象になることがあります。
当院に限らず、頭痛の相談では、片頭痛かどうかを考える前に、くも膜下出血や脳腫瘍などほかの病気による頭痛ではないかを確かめることが大切です。必要に応じてMRIなどの検査を検討します。片頭痛は「痛くなる前に防ぐ」治療を選べる時代になってきましたが、その前提として原因の見極めが大切です。
当院へは、植田駅から天白巡回バスに乗り、「植田本町二丁目」で降りてすぐです。駐車場も備えています。最新の診療日はアクセスページでご確認ください。
診察室にて、2〜4週間分の頭痛日記、以前の予防薬で困ったこと、妊娠の希望の3つを最初に伝えてみてください。そこから、続けやすい予防の形を一緒に考えていきます。
よくある質問
Q. 以前の飲み薬が合わなかった場合、CGRP関連抗体薬を使えますか?
A. 保険で使うには、従来の予防薬での経過など、薬ごとに定められた条件があります。頭痛の日数や生活への支障、以前の治療内容をうかがったうえで、医師が判断します。使っていた薬の名前と、やめた理由を控えておくとスムーズです。
Q. 抗体薬の注射は、毎回通院が必要ですか?
A. 製剤や治療の状況によっては、医師の指導のもとで自己注射を選べる場合があります。ただし、取り扱いや進め方は医療機関によって異なります。受診前に、注射の間隔と方法を確認してください。
Q. 将来の妊娠を考えています。予防薬はどう選べばよいですか?
A. 抗体薬も飲み薬も、妊娠を考える時期の使い方には慎重な判断が必要です3。自己判断で中止や変更はせず、妊娠の希望とおおよその時期を治療開始前に医師へ伝えてください。
Q. 予防薬を始めたら、発作のときの薬は使わなくてよいのですか?
A. 予防薬は、発作が起こる日を減らすことを目指す薬です12。発作のときに使う薬とは役割が異なり、併用することが一般的です。発作時の薬は、痛みの立ち上がりの早さや、頭痛が長引くかどうかに合わせて医師が調整します。
参考文献
1. Shakir I, Shahzad F, Shabbir A, et al. Efficacy and safety of CGRP monoclonal antibodies for migraine prevention in episodic migraine; a network Meta-analysis. European Journal of Clinical Pharmacology. 2026. PMID: 41546694 / DOI: 10.1007/s00228-025-03934-3
2. Haghdoost F, Puledda F, Garcia-Azorin D, et al. Evaluating the efficacy of CGRP mAbs and gepants for the preventive treatment of migraine: A systematic review and network meta-analysis of phase 3 randomised controlled trials. Cephalalgia. 2023. PMID: 36855951 / DOI: 10.1177/03331024231159366
3. Messina R, Huessler EM, Puledda F, et al. Safety and tolerability of monoclonal antibodies targeting the CGRP pathway and gepants in migraine prevention: A systematic review and network meta-analysis. Cephalalgia. 2023. PMID: 36786548 / DOI: 10.1177/03331024231152169
平成9年4月 名古屋大学医学部医学科 入学
平成15年4月 社会保険中京病院(現 JCHO中京病院) 就職
平成20年4月 名古屋大学医学部大学院 入学
平成23年4月 社会保険中京病院(現 JCHO中京病院) 就職
令和5年11月 たけもと脳神経外科 開院
臨床研修指導医
日本脊髄外科学会認定医
脊椎脊髄外科専門医
日本脳神経外科学会
日本脳卒中学会
日本脳卒中の外科学会
日本頭痛学会
日本脊髄外科学会
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