
発作を減らす治療を考え始めたら
月に何度か仕事を早退し、市販の鎮痛薬を飲む日も増えてきた。こうした状況は、発作が起きてから抑える治療に加えて、発作そのものを起こりにくくする「予防治療」を検討するきっかけになります。以前の予防薬が眠気で続けられなかった方にとっては、CGRP関連薬が次の選択肢になる場合があります。
この記事では、CGRP関連薬の働き方、注射薬と飲み薬の違い、副作用、保険や費用の確認先、受診前に記録しておきたいことを整理しました。ご自身に合う方針を医師と話し合うための材料としてお読みください。
この記事の要点まとめ
- CGRP関連薬は片頭痛に関わるCGRPを標的とし、注射薬の抗体製剤と飲み薬のゲパント系薬があります。
- 効果や副作用には個人差があり、投与間隔や振り返り時期、国内での適応を医師に確認しましょう。
- 頭痛日数や発作時薬の使用日数、過去の予防薬を記録し、保険適用や費用を受診先で相談しましょう。
目次
CGRP関連薬は片頭痛の何に働きかける?

CGRP関連薬は、片頭痛の発作に関わる CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド) という物質の働きを抑え、発作を起こりにくくすることを目指す予防薬です。従来の予防薬の多くは、高血圧やてんかん、うつ病などの治療薬を片頭痛にも応用したものでした。CGRP関連薬は、片頭痛のしくみそのものを標的に開発された点が異なります1。
CGRPは、頭の血管の周りにある三叉神経(顔や頭の感覚を伝える神経)から放出される物質です。血管を広げたり、痛みの信号を強めたりする働きがあると考えられています。片頭痛の発作中には、このCGRPが増えることが知られています。
CGRP関連薬は、大きく2つの種類に分かれます。
| 抗体製剤(注射薬) | ゲパント系薬(飲み薬) | |
|---|---|---|
| 働き方 | CGRPそのもの、またはCGRPを受け取る部分(受容体)に結びつく | 受容体をふさぎ、CGRPが作用しにくくする |
| 国内で予防に使われている主な薬 | ガルカネズマブ、フレマネズマブ、エレヌマブ | 予防に使えるか、発作時に使うかは薬剤ごとに確認が必要 |
| 使い方 | 皮下注射。間隔は薬剤によって異なる | 内服 |
ゲパント系薬は、海外では予防目的と発作時の両方で研究が進んでいます。一方で、国内で承認されている薬剤と、その使い道(適応)は海外と同じではありません。気になる薬の名前があれば、受診時に医師へそのまま尋ねていただければと思います。
研究で示された結果についても触れておきます。海外の第3相試験19件(約1万4千人)をまとめた解析では、抗体製剤とゲパント系薬(アトゲパント、リメゲパント)のほぼすべての用量で、プラセボ(有効成分を含まない比較薬)と比べて月あたりの片頭痛日数が減る方向の結果が示されました。日数が半分以下になった人の割合も、プラセボより高かったと報告されています2。
ただし、これは多くの参加者の平均をみた結果です。どの程度変化するか、あるいは変化を感じにくいかには個人差があります。
ポイント
CGRP関連薬は片頭痛のしくみを標的にした予防薬で、注射の抗体製剤と飲み薬のゲパント系薬があります。国内で使える薬剤と適応は、医師に個別に確認しましょう。
注射・内服を続ける前に確認したいこと
予防薬を続けられるかどうかは、投与の間隔、副作用の出方、効果を振り返る時期の3点を始める前に確認しておくと見通しを立てやすくなります。以前の薬を眠気でやめた経験がある方ほど、この3点を具体的に聞いておくと判断しやすいはずです。
投与の間隔と通院
抗体製剤は月1回前後の皮下注射が基本で、製剤や用量によって間隔は異なります2。医療機関で注射を受ける方法に加え、条件に応じて自宅で自己注射を行う方法が選べる薬剤もあります。どちらが合うかは、医師が通院の頻度や生活の状況を伺ったうえで判断します。飲み薬は服用のタイミングを日々の生活に組み込めるかが目安になります。
報告されている副作用
抗CGRP抗体製剤とゲパント系薬の安全性を比べた解析では、試験に参加した人で起きた有害事象(薬との関係を問わず治療中に起きた体の不調)や、重い有害事象、副作用による中止などが検討されています。その結果、薬剤や用量によって副作用の出方に違いがあることが示されました3。
抗体製剤では注射した部位の痛み・赤み・かゆみがよく知られており、多くは注射した場所に限られる反応です。薬剤によっては便秘が報告されています3が、実際に皮膚の局所反応以外には副作用で問題となるは乏しいです。ゲパント系薬では吐き気や便秘などが挙げられます3。以前の予防薬で出た眠気が、CGRP関連薬でも同じように起こるとは限りません。過去の副作用は薬の名前と一緒に、別の話として医師へ伝えてください。
効果を振り返る時期
予防薬は飲んだり注射したりした直後に変化を実感するものではなく、数か月単位で経過を見ていきます。振り返りの時期は、薬剤ごとに医師と決めておきましょう。そのために役立つのが頭痛ダイアリー(頭痛の記録)です。
- 頭痛が起きた日数と、痛みの強さ
- 市販薬を含め、発作時の薬を飲んだ日数と回数
- 早退や送迎の変更など、生活への支障
- 副作用かもしれないと感じた体の変化
一剤で手応えを感じにくい場合でも、別の薬への切り替えや従来の予防薬との組み合わせなど、方針を見直すことは可能です。記録があると、何を変えるかを医師と具体的に話し合えます。
ポイント
投与間隔・副作用・振り返りの時期を始める前に確認し、頭痛の日数と薬を飲んだ日数を記録しておくと、続けるか見直すかを判断しやすくなります。
名古屋市で予防治療を相談する際の準備
受診前に整理しておきたいのは、通院できる曜日と時間帯、これまでの予防薬の経過、保険適用と自己負担の確認先の3つです。これらを伝えられると、薬剤や投与方法の相談が進みやすくなります。
これまでの治療歴を伝える
国内で抗体製剤を保険診療で使う際には、従来の予防薬を試した経緯などが確認されます。従来の予防薬には、β遮断薬、抗てんかん薬、抗うつ薬、カルシウム拮抗薬などがあります1。保険適用の詳しい条件に当てはまるかどうかは、診察のうえで医師が判断します。
「どの薬を、どのくらいの期間飲み、なぜやめたのか」をメモしておくと伝えやすいでしょう。眠気で仕事に支障が出た、という具体的な理由は、次の薬を選ぶ大事な手がかりになります。
費用は受診先で確認する
自己負担額は、薬剤の種類や投与間隔、加入している保険の負担割合、診察・検査の内容によって変わります。海外の医療技術評価では、抗体製剤は高価な薬として費用対効果が検討されています1。ただし、これは海外の医療制度に基づく評価で、国内の窓口での自己負担額とは別のものです。
この記事で触れている費用の話は一般的な考え方であり、当院の費用を示すものではありません。 実際の費用は医療機関や薬剤によって異なりますので、受診先でご確認ください。
予防薬の前に、頭痛の原因を確かめる
頭痛の診察では、頭痛の経過が確認されます。発作の回数に加えて、痛みの立ち上がりの早さや、頭痛が長引くかどうか、仕事や家事への影響も確認されます。くも膜下出血や脳腫瘍など、別の病気による頭痛が疑われる場合には、MRIでの確認が検討されます。片頭痛と診断がついていることが、予防治療を考える前提になるためです。
天白区周辺にお住まいで昭和区へ通勤している方なら、勤務後やお子様の送迎の前後に通えるかが気になるところでしょう。当院はバス停「植田本町二丁目」から徒歩1分で、23台分の駐車場があります。名古屋市内での通院計画を立てる際は、最新の診療日時をアクセスページでご確認ください。
頭痛ダイアリーを1〜2か月分つけ、過去の予防薬のメモとあわせて受診時にお持ちいただければと思います。疑問点は、遠慮なくそのままご質問ください。
よくある質問
Q. CGRP関連薬は、最初の予防薬として使えますか?
A. 国内で抗体製剤を保険診療で使う場合は、従来の予防薬を試した経緯などが確認できないと、保険診療のもとで処方することができません。ご自身が対象になるかは、これまでの治療歴を伺ったうえで医師が判断します。
Q. 予防薬を始めたら、発作時のNSAIDsやトリプタンは使わなくなりますか?
A. 予防薬は発作を起こりにくくすることを目指す薬で、起きた発作を抑える薬とは役割が異なります。そのため、発作時の薬は引き続き必要になることが多いです。どの薬をどう使い分けるかは、痛みの進み方や飲んだ日数の記録をもとに医師と調整してください。
Q. 以前の予防薬で眠気が出ました。CGRP関連薬でも出ますか?
A. CGRP関連薬で報告されている主な副作用は、注射部位の反応や便秘などで、薬剤や用量によって出方が異なります3。眠気の出方にも個人差があるため、以前の薬名と症状を医師にお伝えください。
Q. 効果があるかどうかは、どのくらいで分かりますか?
A. 研究では月あたりの片頭痛日数の変化で評価されており2、数か月単位で経過を見るのが一般的です。振り返りの時期は薬剤ごとに医師と決め、それまで頭痛の日数と薬を飲んだ日数を記録しておくと判断しやすくなります。
参考文献
1. Mistry H, Naghdi S, Brown A, et al. Preventive drug treatments for adults with chronic migraine: a systematic review with economic modelling. Health Technology Assessment. 2024. PMID: 39365169 / DOI: 10.3310/AYWA5297
2. Haghdoost F, Puledda F, Garcia-Azorin D, et al. Evaluating the efficacy of CGRP mAbs and gepants for the preventive treatment of migraine: A systematic review and network meta-analysis of phase 3 randomised controlled trials. Cephalalgia. 2023. PMID: 36855951 / DOI: 10.1177/03331024231159366
3. Messina R, Huessler EM, Puledda F, et al. Safety and tolerability of monoclonal antibodies targeting the CGRP pathway and gepants in migraine prevention: A systematic review and network meta-analysis. Cephalalgia. 2023. PMID: 36786548 / DOI: 10.1177/03331024231152169
平成9年4月 名古屋大学医学部医学科 入学
平成15年4月 社会保険中京病院(現 JCHO中京病院) 就職
平成20年4月 名古屋大学医学部大学院 入学
平成23年4月 社会保険中京病院(現 JCHO中京病院) 就職
令和5年11月 たけもと脳神経外科 開院
臨床研修指導医
日本脊髄外科学会認定医
脊椎脊髄外科専門医
日本脳神経外科学会
日本脳卒中学会
日本脳卒中の外科学会
日本頭痛学会
日本脊髄外科学会
