家族がくも膜下出血に?手術の種類と術後の通院・経過観察を解説|天白区の脳神経外科|たけもと脳神経外科

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家族がくも膜下出血に?手術の種類と術後の通院・経過観察を解説

家族がくも膜下出血に?手術の種類と術後の通院・経過観察を解説

ご家族が突然のくも膜下出血——手術と術後を落ち着いて理解するために


「母が救急搬送され、これから手術方針の説明を受ける」。突然の出来事に頭が真っ白になりながらも、家族の代表として落ち着いて話を聞きたい。そんな状況に置かれる方は少なくありません。くも膜下出血で検討される主な手術は、開頭クリッピング術とコイル塞栓術の2つ。どちらが候補になるかは、動脈瘤の位置や形、全身の状態によって変わります。この記事では、2つの手術の考え方、術後に注意したい合併症とリハビリの流れ、退院後の経過観察までを順を追って整理しました。ご家族への共有資料としてもお役立てください。


この記事の要点まとめ


  • くも膜下出血の手術には開頭クリッピング術とコイル塞栓術があり、動脈瘤の部位や状態により検討される方法が異なります
  • 術後は脳血管攣縮や正常圧水頭症への留意とリハビリの段階を知ることが経過理解の手がかりになります
  • 退院後はMRIによる経過観察や血圧管理、家族歴がある場合の脳ドックが継続的な生活管理に役立ちます


くも膜下出血における2つの主要手術|開頭クリッピング術とコイル塞栓術


くも膜下出血の多くは、脳の動脈にできたこぶ(脳動脈瘤)が破裂して起こります。突然の激しい頭痛や吐き気、意識障害で発症するケースが多く、いったん止まった出血が再び起こる「再破裂」を防ぐことが急性期治療の中心的な目的とされています。そのために検討されるのが、動脈瘤への血流を遮断する外科的処置。代表的な方法として挙げられるのが、開頭クリッピング術とコイル塞栓術です2


開頭クリッピング術の仕組みと適応となるケース


開頭クリッピング術は、頭皮を切開して頭蓋骨の一部を外し、脳のすき間から動脈瘤に到達して、その根元(ネック)を金属製のクリップで挟み血流を遮断する方法です。動脈瘤を直接目で確認しながら処置を進められる点が、この方法の特徴として説明されています12


周囲に広がった血液(血腫)を同時に取り除ける場合もあり、頭蓋内の圧が高まっているケースでは、その処置を兼ねられることも考慮されます。一方で、頭蓋骨を開けるぶん身体への負担は相対的に大きく、手術時間や入院期間、創部のケアまで見込んだ計画が必要になります。首の付け根に近い部位や、こぶの首が広く形の複雑な動脈瘤では、この方法が検討されることがあります。


コイル塞栓術(脳血管内治療)の仕組みと適応となるケース


コイル塞栓術は、脚の付け根や手首の血管からカテーテルを挿入し、血管の内側を通って動脈瘤の中まで到達させ、細いプラチナ製のコイルを詰めて血流が入りにくい状態にする血管内治療です2。頭を開けずに行えるため、身体への侵襲が少なめとされる点が特徴に挙げられます。


ご高齢の方や、心臓・呼吸機能などの全身状態から開頭手術の負担が大きいと判断される場合、あるいは脳の深部にあって外側から到達しにくい部位の動脈瘤では、この方法が候補になります。もっとも、こぶの形状によってはコイルが安定しにくいこともあり、その際はステントやバルーンを併用する手法が検討されます。留置後の状態を画像で追う経過観察が前提になる点も、あらかじめ知っておきたいところです。


どちらの手術法が選ばれるか?状態に応じた判断基準の例


2つの方法は優劣で決まるものではなく、複数の条件を突き合わせて選択されます。実際の判断で重視される要素には、次のようなものがあります。


  • 動脈瘤の部位:前方循環か後方循環か、周囲の血管や脳との位置関係
  • 形状と大きさ:ネックの広さ、こぶの向き、分岐血管との関わり
  • 年齢と全身状態:全身麻酔の負担、併存疾患、抗血小板薬の使用可否
  • 頭蓋内の状況:血腫の量、脳のむくみ(脳浮腫)や頭蓋内圧の程度
  • 発症からの時間と重症度:意識状態の評価、搬送後の全身管理の状況

主治医から説明を受ける際は、「なぜその方法が候補になっているのか」「もう一方を選びにくい理由は何か」を確認しておくと、ご家族間での共有がしやすくなります。当院では日本脳神経外科学会の脳神経外科専門医・指導医の資格を有する医師が診察を行っており、急性期病院での説明内容を整理して受け止めるためのご相談にも対応しています。


術後に注意したい主要な合併症とリハビリテーションの段階

術後に注意したい主要な合併症とリハビリテーションの段階

くも膜下出血は、動脈瘤の処置が終わればそこで一区切り、というものではありません。発症からの数週間は頭蓋内でさまざまな変化が起こり得るため、集中治療室での全身管理と観察が続きます2。この期間に医療者が何を見ているのかを知っておくと、ご家族も日々の説明を受け止めやすくなります。


発症後に注意すべき脳血管攣縮と正常圧水頭症


発症後おおむね4日から14日ごろは、脳血管攣縮(のうけっかんけいしゅく)に注意が必要な時期とされています。くも膜下腔に広がった血液の影響で脳の動脈が細くなり、血流が不足しやすくなる現象です。手足の力が入りにくい、話しにくい、反応が鈍い——こうした変化が手がかりになるため、薬剤の投与や水分・血圧の管理を行いながら慎重に経過を追います2


もう一つ、発症から数週間〜数か月後に現れることがあるのが正常圧水頭症です。脳脊髄液の流れや吸収が滞り、歩きにくさ、物忘れ、尿失禁といった変化がじわじわと出てくる場合があります。加齢による変化と見分けにくいため、「退院後に歩き方や物忘れが目立ってきた」と感じたら、早めに主治医へご相談ください。髄液の流れを補助する処置が検討されることもあります。


急性期から生活期へつながるリハビリテーションの流れ


リハビリテーションは、全身状態が許す範囲で早期から始まります。大まかには次のような段階を経ていきます。


1. 急性期:ベッド上での関節の動かし方、体位の調整、呼吸や嚥下の確認から開始

2. 回復期:座る・立つ・歩く動作の練習、着替えや食事などの生活動作、言語や記憶の訓練

3. 生活期:自宅や地域での生活に合わせた動作の調整、通院リハビリや介護サービスの活用


回復期リハビリテーション病棟へ転院し、集中的に取り組む流れも一般的です。経過の進み方や到達できる状態は、出血の程度や年齢、合併症の有無によって大きく異なります。他のご家族に伝える際は、平均的な期間の話よりも「今どの段階にいて、次に何を目標にしているか」を担当の療法士から確認して共有すると、認識のずれが生じにくくなります。


後遺症や高次脳機能障害への理解とご家族のサポート


残ることのある症状としては、手足の麻痺や言葉が出にくい失語のほか、外見からは分かりにくい高次脳機能障害があります。注意が続かない、段取りが立てられない、疲れやすい、感情の起伏が大きくなる——こうした変化は「性格が変わった」と受け取られやすく、ご家族が戸惑う場面も少なくありません。


支える側のポイントは、一度に多くを求めず、環境を整えること。メモやカレンダーで予定を見える形にする、静かな場所で一つずつ伝える、休憩をこまめに挟む、といった工夫が助けになります。また、医療費の負担については高額療養費制度、生活面の支援については身体障害者手帳や障害年金、介護保険といった制度が関わることがあります。入院中から医療機関のソーシャルワーカーに相談しておくと、退院後の見通しを立てやすくなります。


退院後の生活管理と地域クリニックでの継続的な経過観察


退院はゴールではなく、長い経過観察の始まりでもあります。処置を行った動脈瘤の状態確認、新たな動脈瘤の有無、血圧などのリスク管理。これらを続けていくうえで、通いやすい場所にかかりつけの脳神経外科があることは支えの一つになります2


MRI装置を活用した脳の定期検査と経過観察の重要性


くも膜下出血の後は、治療した部位の状態や、別の場所に動脈瘤が新たに見つからないかを画像で確認していきます。MRI・MRA検査は放射線を使わずに脳の血管や組織の状態を評価する検査で、繰り返し行う経過観察に用いられます。コイル塞栓術の後はコイルの安定性、クリッピング術の後は周囲の血管の状態などが、確認の対象です。


検査の間隔は、治療内容や動脈瘤の残存状況をふまえて主治医が判断します。急性期病院での節目の検査と、地域のクリニックでの日常的な管理・画像フォローを組み合わせる形も選択肢の一つ。当院では、脳内および脊髄・脊椎を詳細に評価するためのMRIや、脳卒中などのリスク評価に用いる超音波診断装置を導入しており、紹介元の医療機関と情報を共有しながらの経過観察にも対応しています。


高血圧管理と生活習慣の見直しによる再発防止


動脈瘤の形成や破裂に関わる要因としてよく挙げられるのが、高血圧、喫煙、過度な飲酒です。退院後の生活管理では、次の点が中心になります。


  • 血圧の記録:家庭血圧計で朝晩に測り、数値を持って受診する
  • 禁煙:ご本人だけでなく同居のご家族も含めて取り組む
  • 減塩と食事:味付けの見直し、加工食品や汁物の塩分に注意
  • 服薬の継続:降圧薬などを自己判断で中断しない
  • 活動の再開:運動や仕事、自動車の運転は主治医の許可を得てから段階的に

運転の再開や職場復帰の時期は、症状や検査結果、職種によって判断が分かれます。「いつから何をしてよいか」は必ず主治医に確認し、ご家族の間でも共有しておきましょう。


血縁者に経験者がいる場合のご家族の脳ドック


ご両親やご兄弟にくも膜下出血や脳動脈瘤の既往がある場合、ご自身も未破裂脳動脈瘤を持つ割合がやや高まると報告されています。家族歴そのものは変えられない要因ですが、だからこそ症状のない段階で状態を把握しておく意味があります2


脳ドックでは、MRI・MRAを用いて未破裂脳動脈瘤や脳血管の狭窄、無症状の脳梗塞、脳腫瘍などの有無を確認します。仮に小さな動脈瘤が見つかっても、すぐ手術になるわけではなく、大きさや部位、年齢を踏まえて経過観察を選ぶことも少なくありません。判断の材料を早めに持てること自体が、脳ドックの意義といえます。


当院の院長は、急性期病院で頭蓋内疾患の外科的治療に携わるなかで、救うことができず治療室の外で悲嘆に暮れるご家族の姿にも接してきました。そうした経験から、地域の皆さまにより近い場所で脳卒中の予防および各疾患の早期発見に努めたいという思いで、天白区元植田にて開院しています。ご家族の入院をきっかけに不安を感じている方も、どうぞ一度ご相談ください。


よくある質問


Q1. くも膜下出血の経過は、どのくらいの期間で見ていくのですか?


A. 一律の日数をお示しすることはできません。くも膜下出血は発症直後の状態に幅が大きく、搬送時の意識レベルや出血量、再破裂や脳血管攣縮の有無などによって経過が変わってきます。とくに発症から2週間前後は頭蓋内の変化が起こりやすい時期として、慎重な管理が行われます。日々の状況は主治医から直接説明を受け、ご家族の間で共有されることをおすすめします。


Q2. くも膜下出血に前兆はありますか?


A. 多くは前兆なく突然発症しますが、破裂前に少量の出血が起こる「警告出血」として、これまでに経験のない突然の頭痛が数日前に現れることがあります。また動脈瘤が神経を圧迫し、まぶたが下がる、物が二重に見える、片側の瞳が大きくなるといった変化が生じる場合も。突然の激しい頭痛やこうした症状があるときは、様子を見ずに救急要請をご検討ください。


Q3. 経過の見通しについて、確率で教えてもらえますか?


A. 個々の状況で大きく異なるため、確率を一概にお伝えすることは控えています。一般には、発症時の重症度、医療機関到着までの時間、再破裂の有無、術後の合併症管理などが経過に関わるとされています。数値だけで判断せず、担当医から現在の状態と今後の見通しについて説明を受けることが大切です。


Q4. くも膜下出血の原因はストレスですか?


A. ストレス単独が原因とは言い切れません。背景として多いのは脳動脈瘤の破裂で、その形成や破裂には高血圧、喫煙、過度の飲酒、家族歴などが関わると考えられています。ストレスや強い興奮は血圧の上昇を招く要因になり得るため、生活習慣全体の管理という観点で向き合うのが現実的でしょう。


Q5. 家族が突然倒れたとき、まず何をすればよいですか?


A. まず救急要請を行い、平らな場所で安静にし、吐き気があれば顔を横に向けて誤嚥を防ぎます。強く揺すったり、無理に水や薬を飲ませたりすることは控えてください。倒れた時刻、症状の経過、服用中の薬(お薬手帳)、既往歴を伝えられるよう準備しておくと、その後の診療に役立ちます。


Q6. 退院後の経過観察は自宅近くのクリニックでも受けられますか?


A. 治療内容や状態によりますが、急性期病院での節目の検査と、通いやすいクリニックでの血圧管理や画像フォローを組み合わせる形は一般的です。まずは主治医に紹介の可否をご相談いただき、診療情報提供書をお持ちいただくとスムーズです。当院ではMRIを備え、地域での継続的な経過観察に対応しています。


参考文献


1. 日本外科学会(外科一般・手術・術後管理に関する学術情報)https://www.jssoc.or.jp/

2. 一般社団法人 日本脳神経外科学会(脳・脊髄の外科治療・脳血管疾患に関する学術情報)https://www.jns-official.jp/


竹本 将也

医師


たけもと脳神経外科

院長

竹本 将也

経歴
平成9年3月 愛知県立岡崎高等学校 卒業
平成9年4月 名古屋大学医学部医学科 入学
平成15年4月 社会保険中京病院(現 JCHO中京病院) 就職
平成20年4月 名古屋大学医学部大学院 入学
平成23年4月 社会保険中京病院(現 JCHO中京病院) 就職
令和5年11月 たけもと脳神経外科 開院
資格・所属学会
脳神経外科専門医・指導医
臨床研修指導医
日本脊髄外科学会認定医
脊椎脊髄外科専門医
日本脳神経外科学会
日本脳卒中学会
日本脳卒中の外科学会
日本頭痛学会
日本脊髄外科学会