
その頭痛、脈打つ痛みと吐き気を伴っていませんか
仕事や家事の途中で頭の片側がズキンと脈打ち、吐き気や光のまぶしさまで重なる。そんな日が増えていないでしょうか。市販の鎮痛薬でしのぐうちに服用回数が増え、気になっている方も少なくありません。この記事では、片頭痛にみられる症状の特徴と、医療機関が診断で何を見ているのかを整理します。緊張型頭痛との違い、記録の付け方、脳神経外科でMRI検査を検討する目安まで、ご自身の頭痛を客観的に見つめ直す材料をまとめました。
この記事の要点まとめ
- 拍動性の痛みや吐き気、光・音過敏など片頭痛にみられる症状の特徴を整理しています
- 国際頭痛分類や頭痛ダイアリーの記録が、診断を考えるうえでの手がかりとして紹介されています
- 症状の急な変化などがみられる場合、脳神経外科でのMRI検査による確認が選択肢となります
片頭痛の特徴的な症状と見分け方

頭痛と一口に言っても、その現れ方は人によってかなり違います。まずは片頭痛に多いとされるパターンを知り、ご自身の状態と照らし合わせるところから始めてみましょう。
脈打つ痛みや光・音過敏など代表的な症状の特徴
片頭痛でよく語られるのが、心臓の鼓動に合わせてズキンズキンと脈打つ拍動性の痛み。頭の片側に出ることが多い一方で、両側に及ぶケースもあります。片側だから片頭痛、両側だから違う、と単純に線引きできるものではありません。
痛みの程度は中等度から高度とされます。階段の上り下りや前かがみの動作など、日常のちょっとした体動で強まりやすいのも特徴のひとつ。「デスクワーク中に頭を動かすたびに響く」という訴えは、診察でもしばしば伺います。
さらに、吐き気や嘔吐、光をまぶしく感じる光過敏、生活音がやけに響く音過敏を伴うことも。発作が続く時間はおおむね4〜72時間とされ、暗く静かな部屋で横になりたくなると話される方が多い傾向にあります。
また、頭痛が始まる前に視界の一部がキラキラと光り、ギザギザの模様が広がる閃輝暗点という前兆が現れる方もいます。前兆は通常5〜60分ほどで消え、その後に頭痛が立ち上がる流れをたどると知られています。前兆のある片頭痛と、前兆のない片頭痛に分けて整理されるのはこのためです。
緊張型頭痛との違いとよくある誤解
頭痛のなかで最も頻度が高いとされるのが緊張型頭痛。後頭部から首筋にかけて、ヘルメットで締め付けられるような圧迫感が続くタイプで、痛みは軽度から中等度、体を動かしても強まりにくい点が片頭痛との対比になります。吐き気を伴うことは少なく、入浴や軽い運動のあとに感じ方が変わると話される方もいます。
ここで多い誤解が「肩こりがひどいから、自分のは緊張型頭痛だろう」という自己判断。実際には、片頭痛の発作前後に首や肩のこわばりを感じる方は珍しくありません。肩こりの有無だけで両者を切り分けるのは難しく、痛みの質・持続時間・随伴症状を合わせて見ていく必要があります。また難治性の片頭痛に移行した場合には、多くの患者さんが肩こりを感じるようになり、その場合は緊張型頭痛との区別が困難となります。
両方のタイプが混在している場合もありますし、デスクワークやスマートフォンの長時間使用による姿勢の変化、いわゆるストレートネックが首まわりの負担を増やしている例もみられます。天候や気圧の変化、月経周期に伴うホルモンの変動、睡眠不足、強い光刺激が発作の引き金になる方もいらっしゃいます。
なお、目の奥をえぐられるような強い痛みが片側に集中し、涙や鼻水を伴って一定期間に集中して起こる群発頭痛という別のタイプもあります。痛みの「質」と「付随する症状」を言葉にしておくことが、診察の手がかりを増やす第一歩といえるでしょう。
医療機関で用いる片頭痛の診断基準とスクリーニング指標
頭痛は血液検査の数値のように一目で判定できるものではありません。そのため医療機関では、国際的に共有された基準と、患者さまご自身の記録を手がかりに診断を組み立てていきます。
国際頭痛分類に基づく診断の基本項目
世界的に用いられているのが、国際頭痛学会がまとめた国際頭痛分類第3版(ICHD-3)。前兆のない片頭痛では、おおよそ次のような要件が示されています。
- 発作が5回以上繰り返し起きている
- 未治療の場合、頭痛が4〜72時間持続する
- 片側性・拍動性・中等度以上の強さ・日常動作で強まる、のうち2項目以上を満たす
- 頭痛のあいだに吐き気や嘔吐、あるいは光過敏と音過敏がみられる
- 他の疾患による頭痛では説明がつかない
前兆のある片頭痛では、閃輝暗点などの視覚症状や感覚の異常が数分かけて広がり、60分以内におさまるといった経過が判断材料になります。加えて、頭痛のある日が月に15日以上、3か月を超えて続く状態は慢性片頭痛として区別され、対応の考え方も変わってきます。
こうした項目を専門的に照合するには、医師による問診と診察が欠かせません1。他の疾患が背景にないかを確かめる作業も診断の一部であり、画像検査が検討されるのはこのためです。
簡易チェックシートと頭痛ダイアリーの記録ポイント
受診前のセルフチェックとして知られるのが、3つの質問で構成されるID Migraineという簡易的な質問票。「この3か月間、頭痛で仕事や家事に支障が出たか」「頭痛のとき吐き気を感じたか」「頭痛のとき光をまぶしく感じたか」という設問で、2つ以上当てはまる場合は片頭痛の可能性を念頭に医療機関で相談する目安とされています。あくまで受診のきっかけをつかむためのもので、これだけで診断が定まるわけではありません。
そして診察の場で大きな助けになるのが頭痛ダイアリーです。書き留めていただきたいのは、次の項目になります。
- 頭痛が起きた日付と始まった時刻、おさまった時刻
- 痛みの強さ(10段階など自分なりの尺度で)と痛んだ部位
- 吐き気・光過敏・前兆の有無
- 服用した薬の名前と量、飲んだ時刻
- 天候や気圧の変化、睡眠時間、月経周期、仕事量などの状況
記憶だけを頼りに「だいたい週に何回くらい」とお伝えいただくより、記録が手元にあるほうが発作の頻度や誘因を整理しやすくなります。当院では患者さまの心に寄り添う診療を心がけており、こうした日々の記録は治療方針を一緒に考えるうえで貴重な情報になります。スマートフォンのメモやアプリでもかまいません。2週間から1か月ほど続けてから受診されると、診察でお話しできる内容が具体的になります。
薬の飲み過ぎに注意したい薬剤の使用過多による頭痛(MOH)
「休むわけにいかないから、痛くなる前に飲んでおく」。仕事と育児を両立されている方から、こうしたお話をよく伺います。お気持ちは十分に理解できますが、鎮痛薬の使い方には確認しておきたいポイントがあります。
市販の鎮痛薬を頻繁に服用するリスクと目安
鎮痛薬を長期にわたって高い頻度で使い続けることで、かえって頭痛が起こりやすい状態になることがあります。これが薬剤の使用過多による頭痛(MOH/薬物乱用頭痛)で、国際頭痛分類でも独立した項目として扱われています。
目安として、市販の解熱鎮痛薬(アセトアミノフェンやNSAIDs)は月に15日以上、複数成分を含む配合鎮痛薬やトリプタン製剤などは月に10日以上の使用が3か月を超えて続く場合に注意が必要とされています。もともとあった片頭痛の頻度が増えた、痛みの性質が変わってきた——そう感じたら、服薬日数を振り返ってみてください。
薬の効きが以前と違うと感じても、自己判断で量を増やすことは控え、まずは医師にご相談ください。ここでも頭痛ダイアリーの服薬記録が役立ちます。「飲んだ日を数えたら想像以上だった」と気づかれる患者さまは、決して少なくありません。
専門的な薬物療法による発作予防とコントロール
医療機関で行う片頭痛への薬物療法は、大きく二つの柱に分かれます。発作が起きたときに用いる急性期治療と、発作の頻度や程度への対応を目的とした予防療法です。
急性期治療には、症状の程度に応じてNSAIDsやトリプタン製剤などが用いられ、近年はCGRP関連の選択肢も加わりました。一方、発作が月に複数回あり生活への支障が大きい場合や、急性期薬の使用日数が多くなっている場合には、予防療法を組み合わせる考え方が検討されます。予防に用いられる薬にはカルシウム拮抗薬、抗てんかん薬、β遮断薬、抗うつ薬、CGRP関連抗体薬などがあり、体質や併存疾患、妊娠・授乳の予定などを踏まえて選択していきます1。
どの薬をどう組み合わせるかは、発作の頻度や随伴症状、生活パターンによって一人ひとり異なります。現れ方にも個人差があるため、経過を見ながら調整していく姿勢が大切になります。服薬の記録を持参して医師と共有することが、無理のない治療計画づくりにつながります。あわせて、規則正しい睡眠、空腹を避ける食事、こまめな水分補給、強い光やまぶしさへの対策といった生活面の工夫も、発作の引き金を見直す手がかりになるでしょう。
脳神経外科を受診すべき目安とMRI検査による確認

片頭痛は繰り返す一次性頭痛に分類されますが、頭痛の背景に別の病気が隠れている二次性頭痛もあります。この見極めが、脳神経外科での診療における大切な役割のひとつです。
二次性頭痛を見逃さないための受診サイン
次のような特徴がみられる頭痛は、早めの医療機関受診をおすすめします1。
- 突然、これまで経験したことのない強さの頭痛が起きた(数秒〜1分でピークに達する)
- 手足のしびれや脱力、ろれつが回らない、物が二重に見えるなどを伴う
- 発熱や首の後ろの硬さを伴う
- 頭痛の頻度や強さが、短期間で目立って変化してきた
- 50歳を過ぎてから初めて頭痛が現れた
- 咳やいきみ、姿勢の変化で強まる
- 頭部の打撲のあとに起きた頭痛
これらは、くも膜下出血や脳出血、脳腫瘍、髄膜炎など、速やかな対応を要する病態のサインである可能性があります。当院のホームページでもお伝えしているとおり、頭痛、めまい、ふらつき、呂律が回らない、手足がしびれる、動きがおかしい、歩きにくいといった症状は、注意したい脳の疾患のサインです。当てはまるものがあれば、早めにご相談ください。
MRI検査で頭蓋内の状態を確認する重要性
片頭痛そのものは画像検査で写るものではありません。それでも画像検査に意義があるのは、他の病気の可能性を確かめたうえで、片頭痛としての治療計画を立てられるからです。原因がはっきりしないまま鎮痛薬を続けるより、状態を把握してから対策を組み立てるほうが、納得して治療に取り組みやすくなります。
MRIは放射線を使わずに脳の実質を詳細に描き出す検査で、MRA(磁気共鳴血管撮影)を併用すれば脳動脈瘤や血管の狭窄・閉塞といった血管の状態も評価できます。当院では、脳内および脊髄・脊椎を詳細に評価するためのMRIに加え、脳卒中などのリスク評価のための超音波診断装置などを導入し、精密な検査のための体制を整えています。また、日本脳神経外科学会専門医・指導医、脊椎脊髄外科専門医の資格を有する医師が診察にあたり、頭痛やめまい、手足の脱力などを生じる脳神経外科領域の疾患について診察・画像診断を行っています。
名古屋市天白区元植田にある当院は、お車を停めやすい広々とした駐車場と、車椅子やベビーカーでも通いやすいバリアフリー設計を採用しました。お仕事や子育てで慌ただしい毎日を送る方にも足を運んでいただきやすい環境を心がけています。慢性的に続く頭痛でお困りの際は、これまでの経過をまとめたメモや頭痛ダイアリーをお持ちのうえ、お気軽にご相談ください。
よくある質問
Q1. 頭の両側が痛むのですが、それでも片頭痛の可能性はありますか。
A. 片頭痛は片側に起こることが多いものの、両側に及ぶ方もいらっしゃいます。痛む場所だけで判断せず、拍動性かどうか、体を動かすと強まるか、吐き気や光・音への過敏があるか、といった要素を合わせて医師が評価します。気になるときは診察でご相談ください。
Q2. 頭痛で受診する際は何科がよいのでしょうか。
A. 脳神経外科や脳神経内科、頭痛外来などが選択肢になります。画像検査で頭蓋内の状態を確認したい場合は、MRIを備えた医療機関を選ぶと、一度の受診で評価を進めやすくなります。
Q3. 市販薬を月に何日くらい飲んでいたら相談すべきですか。
A. 解熱鎮痛薬(アセトアミノフェン)で月15日以上、市販の配合鎮痛薬やトリプタン製剤で月10日以上の使用が3か月を超えて続く場合は、薬剤の使用過多による頭痛の観点から一度ご相談いただく目安とされています。服薬日数を書き留めておくと、状況を伝えやすくなります。
Q4. 月経の前後に頭痛が強くなる気がします。関係はありますか。
A. 女性ホルモンの変動が発作の誘因のひとつになる方はいらっしゃいます。頭痛ダイアリーに月経周期も記録しておくと、パターンの把握に役立ちます。妊娠や授乳の予定がある場合は薬の選び方にも関わりますので、遠慮なくお伝えください。
Q5. 子どもの頭痛は大人と同じように考えてよいですか。
A. お子様の片頭痛は、持続時間が大人より短い、両側性が多い、腹痛を伴うことがあるなど、現れ方に違いがみられます。学校生活への影響が続くようであれば、早めに医療機関へご相談ください。
参考文献
1. 日本外科学会. https://www.jssoc.or.jp/
平成9年4月 名古屋大学医学部医学科 入学
平成15年4月 社会保険中京病院(現 JCHO中京病院) 就職
平成20年4月 名古屋大学医学部大学院 入学
平成23年4月 社会保険中京病院(現 JCHO中京病院) 就職
令和5年11月 たけもと脳神経外科 開院
臨床研修指導医
日本脊髄外科学会認定医
脊椎脊髄外科専門医
日本脳神経外科学会
日本脳卒中学会
日本脳卒中の外科学会
日本頭痛学会
日本脊髄外科学会
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